なぜ、あのビール会社は1位に復活したのか

 2016年に発売された書籍のベストセラーの1冊に『キリンビール高知支店の奇跡』(田村潤著、講談社+α新書)がある。
 2000年前後のアサヒビールとのシェア争いの末、奪われた首位の座を奪還するその裏で起きていた、地方支店の奮闘ぶりが書かれた実話だ。
 ビール業界では、長らくトップを譲らなかったキリンビールだったが、世の中がバブルに沸く1987年、アサヒビールがスーパードライを発売して以来、首位の座を脅かされるようになり、ついにはアサヒビールに首位の座を奪われることとなる。
 当時、トップブランドとして君臨するキリンに対し、ビールではこれと言ったヒットがなくブランドとして今一つのアサヒ、そんなイメージをスーパードライの発売でじわじわと市場にブランドが浸透していく。そして逆転を許すことになる。
 そんな中、田村氏が赴任した高知でも、ことごとくアサヒにキリンの牙城を崩されることとなる。部下のモチベーションは下がり続け、暗い雰囲気が蔓延する中、田村氏は考える。とにかく現場からこの雰囲気を変えたい、時には営業マンとひざを突き合わせて対話をし、時には内勤の女性スタッフも参加して全員営業を行うこともしばしば。