少し前の話だが、将棋界で激震が走った。なんと現在最年少プロ棋士である藤井聡太四段(14歳中学2年)が、最年長の加藤一二三 九段(76歳)に勝利したのだ。
その対局の中で、周囲のプロ棋士が驚いたのが、加藤九段の得意とする矢倉という防御策に対し、藤井四段が50手目に刺した「8五歩」(右から8番目、上から5段目の交点に「歩」)という手だそうだ。この場所に「歩」を置いても何の効果もない場所だからだ。
その後、周囲の見立て通り加藤九段の激しい攻撃が続く。何とか応戦しながら攻撃の手が緩むのを見た藤井四段は、すかさず先ほどの「8五歩」の前に桂馬を置く。これが百戦錬磨の加藤九段の表情を一変させる。その後形勢逆転、最年長の加藤九段は最年少の藤井四段に敗れたのである。「負けました」という声と共に。
この勝負、潮目は形勢逆転した時の「桂馬」なのだが、その「桂馬」がなぜ生きたのか、それはすぐ後ろに置かれた「歩」の存在があったからだという。