なぜ、苦境に立つ店舗が息を吹き返したのか

 その昔、何かで耳にした笑い話。しかし優れた販売戦略の思考が含まれており、つくづく感心したものだ。
 ある街に、規模の同じスーパーマーケットが3店舗並んでいた。右のお店は「日本一安い店」という看板を掲げ、左の店舗は「世界一安い店」と看板を出した。両側の店舗がインパクトのある看板を出し、はてと困った真ん中の店舗の店主、「町で一番…」では話なならず、「宇宙で一番」では現実的でない、どうしたものかと思案にふけっていた。
 そこである時店主は思った。同じ土俵で戦うことばかりを考えていたがいっそ違った視点で訴求したらどうか。○○で一番…と考えるから勝てない、そこで考えたのが、両隣にはそれらの看板でお客様が来店される、それらのお客様がウチの店に足を運んでくれる仕組みを作ればよいのではと。かくして店主が掲げた看板は「入り口はこちら」だった。
 テーマパークでもそんな話がある。東京ディズニーランドとよく比較される大阪のユニバーサルスタジオジャパン(以下USJ)は、鳴り物入りで開業したにもかかわらず、数年で経営不振に陥る。そこで招かれたのがマーケティングを統括する森岡氏。
 その森岡氏、開業当初提唱していたUSJの基本方針「大人が楽しむテーマパーク」というコンセプトを、顧客が望む形に変えた。顧客のニーズに視点を合わせたのだ。