なぜ、街はずれの店にお客様は押しかけるのか

 兵庫県の港町、神戸から山に向かいおよそ40キロ。都会からはるか離れた地方都市の住宅地の真ん中に、1件の洋菓子店がある。パティシエ エス コヤマがそれだ。
 この洋菓子店、小山ロールという非常に繊細でなめらかなロールケーキで有名なお店。とは言え、どこのコンビニでも売っているロールケーキ、そのお店に行かないと食べられないほどのものなのか。味の善し悪しはここでは割愛するが、噂が噂を呼び平日も休日も途切れることなくお客様が遠くから押し寄せる、それは事実だ。もちろん美味しさも普通に美味しいくらいではないのだろうが、味だけではなくお店のファシリティやホスピタリティーも大きな要素になる。このお店は実はそのあたりのことがよくわかっていて、お客様を唸らせる仕掛けがあるのだ。せっかく行ってみたはいいけれど、何の変哲もない店舗で、しかもゴミや埃で汚かったり、スタッフの対応が冷たかったりしたら、そんな遠くまでわざわざ行きたいと思わない。梅田の堂島ロールで十分ということになりかねない。
 業種を問わずそのようなお店は多く存在する。長崎県では地方の駅裏にある喫茶店が、マスターのマジックと超能力見たさに、九州各地、中には本州から見に訪れる人もいる。余談だがこの喫茶店、食べ物の評判は思い切り悪い。それでも人が集まる。
 自動車販売店に行くと、