なぜ、話題のパン屋は人々が行列するのか

 東京都内のパン屋で見たそれは、限りなく普通の食パンだった。強いて言えば山型の形をしたイギリスパンに似ている。菓子パンのように甘いわけでもなく、調理パンのような具材が挟まれているでもない。いたってシンプル。だがその割に結構なお値段がする。
 そんなシンプルな食パンを目玉としている店は案外多い。週末や平日の午前中など、食パン目当てに行列ができる程だと聞く。繰り返すが何の変哲もない食パンである。
 ではなぜその何の変哲もない食パンが人々の購買意欲を掻き立ててやまないのか。
 それらの店に共通しているのは、何の変哲もない食パンに何か特別なストーリーを付けているということがある。例えば、北海道産の厳選された小麦だけを使用…とか、霧降高原産のバターを練りこんだとか原材料のこだわりを表わしたものが多い。さらには作り方や素材を活かす技や作り手の哲学がそこにあったりする。