私事で恐縮だが、中学高校と私と同じ陸上部の後輩だった女性の話をする。
彼女は選手としては決して優秀とは言えず、目立った記録を持つわけでもなく、ハードルなどを器用にこなすタイプでもない。全国大会はおろか県内の地区大会の候補にすらされなかった。だが誰よりも練習をする努力の虫のようであったことは間違いない。
そんな彼女が社会に出てしばらくして、交通事故に遭い両足を切断したと聞いた。
学生時代から大きな大会に出ることはなかったが、走るのが好きで努力を怠らない彼女の気持ちを考えると、もう走れないという現実は何とも無念であったろうと想像する。
ずいぶん経ってからだが、その彼女がオリンピックに出場したと聞いた。正確にはパラリンピックだが…。
両足を切断したというハンデーキャップを克服するには…いろいろと考えたことだろう。いろいろな思いを抱え、やがて彼女はシッティングバレーと出会い夢中になる。もともと彼女の強みは、自分の実力とは別に粛々と努力を継続できること。その努力が花開いたのが、ロンドンオリンピックパラリンピックなのだ。
なぜ、彼女は世界の舞台に立てたのか
