その昔、中国に扁鵲(へんじゃく)という名医が居た。彼は三人兄弟の末の弟で、三人ともに医者。三人の中でも彼は数多くの重篤な患者を治す名医として名を残す。
しかし彼は魏の国の文王との会話で、兄弟三人のなかで一番の名医は長兄であり、次が次兄、自分などは三人の中で一番劣ると卑下する。
長兄は、体の変調を事前に察知し病気自体を防ぐので、名医としての名声はさほど起こらない。しかし病を事前に見出すのだから間違いなく三人の中では最も名医である。 次兄は病に罹かってすぐの患者を治すことが多い。患者が痛みを感じる前に病気を治してしまうのだから、長兄同様に名医と言われることは少ないが患者を思うと名医であると。
二人に比べると自分の場合は、重篤な症状により痛みに苦しむ患者を治すことが多く、自ずと名前が世間に響くことになる。だがやはり痛みに苦しむ患者を作らない二人の兄にはかなわないのだと。聞けば確かにその通りだ。