なぜ、カリスマは逮捕されたのか

 先週、日本のみならず、世界の自動車業界に衝撃が走った。ルノー日産グループのカルロス・ゴーン氏が逮捕された。逮捕容疑は報酬の過少申告など有価証券報告書の虚偽記載、また社内調査では不適切な資金の流用などが認められたという。
 まだ調査中ということで、ここでは深くは記さないが、報道されていることが大筋で事実だとすれば、裏金工作と会社の金で私腹を肥やしていたということになる。大企業では時折聞く話だが、なぜ、これだけの地位の人がこんなことを…という疑念が残る。
 当時、瀕死の日産を立て直し、今やグループ企業の屋台骨に成長させた手腕は評価に値する。しかし、その地位や名声のすべてを無くしてしまうような愚行を、集大成と言うべきこの時期に行う必要がどこにあったのだろうか。
 私が駆け出しの営業マンだった頃、私の教育係だった営業課長に、どんなに売れて、どんなに収入が上がって好きなことができるようになっても、世間という階段だけは踏み外してはいけない…と何度も言われたことを思い出す。
 収入を上げることも、実力を発揮し力をつけ地位や発言力を身につけることもビジネスマンとしては必要だろう。しかし踏み外してはいけない階段は常に存在する。知らぬ間にカネと権力に群がる輩が現れて、落とし穴にハマるということだってある。