なぜ、日本は「おもてなし」の国なのか

 仕事行ったドイツでのこと。合計4つのホテルを利用したのだが、同等レベルの日本のホテルに比べて、海外のホテルの気が利かない現状を目の当たりにした。
 日本のビジネスホテルは、1泊5、6千円でも部屋にはスリッパやそこそこのアメニティが揃い、ベッドメイクされているのが当たり前。しかしドイツで1泊1万円クラスのビジネスホテルではそれらが用意されない。
 もちろん歯ブラシはフロントに頼めばもらえるが、言葉の怪しい私は、無理せずスーツケースに忍ばせてある緊急用の歯ブラシでしのぎ、一回目の滞在ではランニングシューズをスリッパ代わりに履いた。もっとも世界で名だたる有名ホテルであればそんなこともないが、些細な気配りも金次第と思うと日本の細やかなサービスが恋しくなる。
 そんな日本のおもてなしの原点を、遠く戦国時代に見ることができる。豊臣秀吉が織田信長の家臣だった際、信長の履物を自分の着物で温めていたという逸話が残されている。また秀吉は常に信長の馬をさすり続け、毛並みの良さを維持し信長はその毛並みの良さをたいそう自慢したなど、まさに今思えばおもてなしの原点がそこにはある。
 そして現代。カジュアルなビジネスホテルに限らず、この国は概ね便利でやさしい国であると言える。それはサービス業に留まらず、私たち小売業にもその思想は及ぶ。