なぜ、洋菓子店の店員は私を不快にさせたのか

 少々時間をさかのぼる。クリスマス前に所用で実家を訪ねる機会があった。その昔、私の父親は小さな運送業を営み、母親は手作りサンドイッチとケーキを販売する店を営んでいた。そんなこともあり母は、パンやケーキの類にはいまでもうるさい。
 時節柄、クリスマスケーキを買って持って行こうと、駅ナカに軒を連ねるケーキ屋を覗く。何店舗かで生クリームタイプのケーキを見ていると、原材料に「生クリーム」と記載されている商品が案外少ないことに気付く。実は生クリームには、乳脂肪分18%以上とか植物性油脂は使わないなど厳格な規定があり、多くのケーキが生クリームとは記載できない商品で、ホイップクリームと記載する(味の違いは言われないとわからない)。
 しかし我が家の母はその違いを感じ取るのだからたまらない。一応、素材や原材料が何であるかを把握して持参するのが通例となる。そこでどちらの記載もないケーキだったため店員に聞いてみた。すると、クリームをそのまま使うか、空気をよく混ぜたかの違い(これをホイップするという)、だからウチの原材料は全部生クリームです!と少々怒り気味の〝どや顔″で返された。私は密やかに心の中で、違うよその説明は…、と思いながら、もう二度と来ることがないであろうその店を後にした。