なぜ、遅延の新幹線でクレームが起きなかったのか

 先週の話だが、仕事を終え、夜の新幹線で東京に戻る際、下り線で車両故障が発生し、作業に時間がかかるため、一時運転見合わせとなった。
 発生したのは下り方面で、東京駅を発車できない列車が何本もあるという。そのため東京駅に入れない上り列車にも影響が及び、私もかなりの時間を駅に停車したままの列車の中で過ごすこととなった。
 運よくというか不幸中の幸いというか、私の乗った列車は、駅に着いた時点で運転見合わせとなったため、閉店間際の売店で買い物をすることもできる。実際に多くの乗客が運転見合わせが数時間に及んでしまうかもしれない事態に備えることができたようだ。
 自宅に居ればちょうど夕食時であり、不安や不満を感じる乗客も少なくなかったことと思う。しかし、私の車両をはじめほとんどの車両で車掌に詰め寄ったり、暴れながら文句を言うような乗客はいなかった。それどころか、席で不平不満を言い合うような仲間同士の乗客すら見られない。なぜそこまで車内が平穏だったのか。
 実は私は、運転見合わせの情報が入った早い時点で、この列車の乗客は案外安心して運転見合わせの時間を過ごせるのではないかと想像した。車掌の情報が逐一とてもに細かくしかも丁寧に入ってきたからだ。何事においても、現在の状況もこの先のこともわからないということは不安なものだが、今回はそれがなかったので案外不安は少なかった。