新入社員研修の季節になった。そんな新入社員の研修で挨拶のトレーニングを行うと、ある書籍の一節を思い出す。日本映画界の名優、高倉健のお辞儀について、今では某上場企業の経営者となっている方へのインタビューで、こんな一節だ。
大学時代、アルバイトでテレビ局のADとして働いているある日のこと。
「おまえ、高倉さんをホテルまで迎えに行け」と言われた。おつきの人もたくさんいるだろうし、無作法をして怒られたらどうしようと…。
ホテルに行って1階のエレベーター前で待っていると、あの大スターの高倉健がたったひとりでエレベーターに乗っていた。呆然とした私のそばに来て、「高倉です。よろしくお願いします」と頭を下げた。しかも直角、90度で。
マネージャーも付き人もいなかった。こういう人が「本当の大人だ」と感じた。(野地秩嘉著『高倉健インタヴューズ』より)
業界内外様々な人による高倉健のエピソードは数多く残る。そのどれもが高倉健は、日本を代表する俳優であったにもかかわらず、決して偉ぶらず楽をしようともせず、
なぜ、名俳優は深々と頭を下げたのか
