知り合いのノンフィクション作家から、新刊が出るとの連絡を受け、早速購入し読んでみた。過去に何冊か出ているシリーズの続編で学びの多い良書だ。
その中で、あるソムリエの話が紹介されている。多くの著名人が彼の常連客だというが、何が著名な常連客の心を惹きつけたかというと、徹底的な気配りだそうだ。お客さまの好みはもちろん、その日の体調や同行されるゲストとの関係に至るまで瞬時に場を読みとにかく気配りに徹するという。
以前はバーテンダーだった彼は、ソムリエになった頃、ワインの知識の習得は当然として、お客さまの視線の動きを見て、それまでのワインリストの順番を入れ替えた。
例えば女性を連れて食事に来たお客さまがワインリストも見ると、上から1本10万円もの高価なワインの名前を最初に目にすることになる。さすがにそこで目を止めてオーダーするお客さまはそうはいない。ちょっと頑張って女性をエスコートしたいお客さまは徐々に視線が下へ動く。その時のお客さまの気持を考えると、手ごろな値段のワインは出てこないかと焦っているのではと想像する。だからワインリストの順序を変えた。手ごろな値段のワインをチョイスして安心して飲むことができるようにしたのだ。
これらの工夫が評判を呼びソムリエとして多くのお客さまから愛されるようになった。お客さまの視点に立ち、
なぜ、そのソムリエはお客さまから愛されたのか
