なぜ、帰り際のひとことは心に染み入るのか

 出張で外食をすることの少ない私だが、1週間ほどの出張ともなれば、ひと晩くらいはホテルの外に食事に出る。今回は研修終了後、ホテルに帰る途中にある、こじんまりとした小料理屋での出来事。
 スタッフは、いつものマスター以外は不定期出勤で、数か月ぶりに会うスタッフもいる。その日はマスターと久しぶりの女性スタッフの二人。その女性スタッフは半年ぶりくらいで、まだ3回ほどしか会ったことがない。30代半ばの彼女は明るくてよく気が利く。
 このお店、グルメ雑誌を賑わすような特別な料理があるわけではない。しかしこの地での仕事の際は毎回のように足を運ぶ。足を運ばせるだけの温かい雰囲気と、ちょっとした気配りを感じることができる店だ。
 先日も私は、マスターやカウンターで隣り合わせたお客さんたちとクルマ談義に花を咲かせた。雨が降っていたこともあり遅くならないうちに…ということで各々会計を済ませて三々五々店を出て帰路に就いた。誰かが店を出る際には、我々の話をカウンターの中で聞いていた女性スタッフが引き戸を開けてその都度、扉の外まで見送ってくれる。
 私が帰る時も外に出て「いつもありがとうございます、お気をつけてお帰りください」と。“いつも”という言葉に、