なぜ、不便な港町の宿にお客は集まるのか

 昨年末、瀬戸内のこじんまりとした港町のとある宿に泊まった。そこは新幹線の駅から送迎バスで40分近く揺られてやっと着くとても不便な場所にある。
 海に面した部屋には露天風呂が備え付けられ、最高の食材を使った料理でのおもてなし。確かに最初に心惹かれたのはそういった要素ではあったが、いざ泊ってみたらそれ以上に感動する体験を味わうことができた。人によるあたたかな「おもてなし」だ。
 宿は大通りからクルマの通れない路地を入った少し先にある。大通りで送迎バスを降りた私たちは宿までの数百メートルの間、荷物を持って歩くことになる。しかしバスの到着に合わせてスタッフ数人が待機しており、私たちの荷物を預かりロビーまで運んでくれる。玄関先からでなく、バスを降りた瞬間から和服姿の女性がだ。
 ロビーに入るとソファーに座って待つ私たちに、スタッフが順番にチェックインの手続きを行いに来る。その間レストランのホールスタッフがウエルカムドリンクを持って積極的に会話の相手をする。待っている間もお客を飽きさせないその気持ちが嬉しい。
 部屋の案内では近隣の見どころを教えてくれたり、