かなり昔のこと、当時イケイケ営業マンだった私は、仲の良かったお客さまからその地域では名店と言われる寿司屋を紹介され、部下を連れて「廻らない寿司」を食べに行った。
もちろん当時カウンターだけの寿司屋など行ったことなど無く、何をどうして良いかわからず、とりあえずテレビドラマでやっているように刺身の盛り合わせとビールを注文、あとは流れに任せた感じ。一方、カウンターの中では大将が、いろんなネタの蘊蓄を教えてくれるのだが、私の不勉強もあってチンプンカンプンで聞いている始末。
その後大将は、今度は魚から離れ得意のバラエティ番組の話をし始める。こうして大将は1人で納得しながらおよそ2時間にわたる「独演会」にご満悦だった。
お客である私たちは、終始大将の話に訳の分からぬまま相槌を打ち、笑いのポイントも掴めず作り笑いで乗り切り、どっちがお客でどっちが店の者だかわからない状態で帰った。もちろん高級なネタもおススメの魚もどれも皆味気なかったことは言うまでもない。
もう少し素人の私たちを気遣いながら、
なぜ、私が食べた名店の寿司は味気なかったのか
