なぜ、私は若い銀行員の提案に乗ったのか

 「銀行とは上手く付き合った方が良い。調子のよい時こそ彼らの話を聞くべきだ」
 これは以前の会社を立ち上げる際に、指導を受けた先生からいただいた言葉。
 会社の代表ではなかった私は、言葉の意味は分かっていただが、決して実感することもなかった。いざという時に備え、銀行とは仲良くしておこうと思うくらいがせいぜい。
 時は過ぎ、会社の代表となった現在の話。お世話になっている銀行の担当者が転勤になった。以前の担当者は大ベテラン、知識も豊富でアドバイスも的確、こう言っては失礼だが年の割にはフットワークが良く、とても頼りになる人だった。
 そのベテラン銀行員を引き継いだのは、入社2年目の若手。元気はあるが知識は豊富とは言えずどこか心許ない。オフィスに来ても彼の提案は、私にも会社にもピントの外れたものが多く、税理士と苦笑したこともあった。
 しかし彼は、元気が良く挨拶を聞いているだけでも気持ちがいい。顧客への提案は、おそらくその時のお勧め商品なのだろうが、一生懸命説明してくれる。もっともそれがお客である私のためと言いながら、かなり的が外れてはいるのだが…。
 その一生懸命さに折れ、