出張先で数少ない行きつけの話。その店はカウンター十数席ほどの小さな居酒屋。決して高級店ではなく金額は庶民的だ。
その居酒屋は繁華街とは逆方向に駅を降り、住宅地に向かう路地に面した場所にある。しかもその店にたどり着くまでには10件近くの同じような店が並ぶ。したがって、フリーのお客がその店を目指してくることは正直少ないと思われる。
しかしそんな繁華街からも離れ、途中同じような店があるその先の、はっきり言って不利な立地の店でありながら、予約をしないと満席で入れないことが多々ある繁盛店だ。
料理はどれをとっても美味しく満足感は高い。とは言うものの特に雑誌で取り上げられるような斬新で見栄えのするメニューがあるわけでもない。いわば普通に美味しい店。あえて言えば先にも述べたように庶民的な値段で安心して飲み食いできる店だ。
そんな店の店主のこだわりは、「どんなに忙しくてスタッフがバタバタしていても、誰かが必ずお客さまが帰る際にはお店の外に出てお見送りをする」こと。
その際に必ずお礼の言葉に加え「ひとこと」声をかける。お店の外に出て必ずだ。
それがそのお店の信念であり、