なぜ、「三つ葉」が料理の主役になれたのか

 私のよく行く焼き鳥屋は、焼き鳥の他におでんもやっている。焼き鳥でそこそこお腹を満たしたところで、シメ代わりに薄口の京風おでんをいただくのがたまらない。
 別にグルメのコラムを書くつもりはない。私が注目したのは、おでんのメニューに燦然と輝く「三つ葉」という食材だ。
 「三つ葉」と言えば、お吸い物に色添えとして入っていたり、なにかの料理のアクセントになっていたり、そのくらいしか思い浮かばない。しかし「三つ葉」があるとないとではその料理の格が違ってくる。そんな名脇役と言っていい。
だが、ここのおでんの「三つ葉」は、私が知っている「三つ葉」とは迫力が違う。透き通った出汁の中に「三つ葉の『束』」が、これでもかというほど器の中で渦巻く。
 その渦巻きを食べた瞬間、癖のないセリではないかと思うほど、シャッキシャキの触感が口の中を支配する。もはやこれは私が知る名脇役の「三つ葉」ではない。
 この店の店主は、経験と知見を基に、この名脇役をこの上ないほどの主役に大抜擢してしまった。決してグルメではない私が知らないだけかもしれないが、それでも私と同行する何人もの知人は、皆この店の「三つ葉」のおでんには驚く。
 研修や人材育成のお手伝いを行う中で、こんなことがよくある。
 会社の上司や店長からは、