学生時代より好んで履いている靴のブランドがある。当時は革のローファーから始まり、就職しビジネスシューズもそのブランドの靴を多く履くようになった。
最近ではすべてのビジネスシューズに加え、カジュアルシューズも半分がこのブランドの物。このブランドのスタッフは、皆、知識が豊富でそれぞれの靴の特性を的確に伝えてくれる。だから、結果的に買って帰ることが多い。
自分の靴の使い方や靴を履くシーン(主にオフィス内か外回りかなど)に応じてソールの素材や、作り方による硬さが足に及ぼす影響など考慮し、的確にお勧めの靴を提案してくれる。店員である彼ら自身がそれぞれの靴の履き心地をよく知っている。
また、いま時は当たり前なのだろうが、個人の購入履歴が記録されている。したがって前回買った靴の具合などを聞いてくれる。思ったより少々きつかったと言えば、無料で革を伸ばすことが出来、そうすれば快適に履くことが出来るなどの提案もしてくれる。だからまた行きたくなる。
自動車販売の業界では、クルマに興味を持っていないスタッフが増えている。そもそもクルマに乗ること自体それほど多くないという人もいる。
そんな事情は別として、仕事なのだからお客さまに然るべき知識を伝えられなければ困る。しかしそれが出来ていないスタッフが少なくない。
クルマの乗り心地を聞かれ、「快適です」で済ませる営業マン。
どのように快適なのかが語れない。ふわふわと柔らくゴージャスな感じで快適なのか、硬めでちょっとしたコーナーでもロールが抑えられ安定感があって快適なのか、そもそもお客さまにとって快適の定義も違う。
乗り心地も具体的にどのように感じられるかを、自分の言葉にしておく必要がある。そして大切なのは、それをお客さまの趣向に合わせて的確に伝えること。
そのためには、可能な限り自分で乗って実際に確かめなければならないし、出来る限り雑誌やネット記事などのインプレッションを集めなければならない。それくらいの努力はプロとして必須と言っていい。
前出の靴屋のスタッフに、それだけの靴の感触をなぜ知っているのかと聞いた。もちろんそれなりに知識の習得や事前学習もするそうだが、最後は実際に自分で試し履きして確認するそうだ。
1足2~3万円の靴でさえ見えないところで努力をする。数百万円の商品を扱う私たちが不勉強ではお客さまに申し訳ない、それくらいの自覚は、持っていただきたい。