日本を代表する実業家の1人が鬼籍に入った。享年90歳、老衰でこの世を去ったとのことだが、その人らしい人生の終え方だと思う。その人とは、京セラ名誉会長、稲盛和夫氏だ。
私は何冊も稲盛氏の著書を手に取り、折に触れ何度も読み返した。それらは私にとって単なるビジネス書ではなく、人生を導いてくれる哲学書のようでもあったからだ。
京セラ(創業時は京都セラミック)の創業者であり、コピー機の三田工業の救済や、KDDI(au)の設立、日本航空の再建など多くの事業を手掛けたカリスマ実業家。だが京セラ創業前の苦難は案外知られていない。京セラ設立前は、大学を卒業し小さな会社で技術者として働くが、勤めていた会社の経営が怪しくなっていく。そこで仲間を引き連れ、京都セラミックを設立したが、結果が出るまで少しばかり時間がかかっている。
その後社業を軌道に乗せ、KDDIを設立するに至るが、自己の利益を考えているのではないかと自問自答し、設立の決心に半年を要している。この時、自身の心に問いかけ続けた言葉が後に名言となる「動機善なりや、私心なかりしか」という言葉だ。それほどまでに、「利他(他者の利益)」にこだわっていた。
なぜ、カリスマ実業家は他人の利益を重んじたのか

