以前、同僚から聞いた話。地方への出張の際に彼女は新幹線を予約して乗車した。席は2席並びの通路側。そして同じ駅で初老のご夫婦2人連れも乗車する。奥様は自分の隣の窓側席、ご主人は自分の後ろの通路側席と微妙な配置。もしも目的の駅が同じであればと思い、どちらまで行くのかを聞いてみた。すると降車駅は自分と同じ駅。だったら後ろの席のご主人と自分の席を変われば、この夫婦は並びの席で旅行を楽しむことができる、そしてその後、彼女はこのご主人と席を変わったそうだ。ここまではよく聞く話。
降車する駅が近づくと、前の席の夫婦がボールペンを彼女にくれた。そのボールペンは、ご主人が経営する会社の創立25周年を記念するボールペンで、その会社とは地元の弁護士事務所だった。とはいえ今すぐに弁護士に相談するような困りごともなく、ひとまずは「すごいですね、何かご相談することができたら連絡しますね」という社交辞令で別れたとのこと。しかし、昔から「医者と弁護士の友達は持っておいた方がよい」と言われるほどの職業。いつ何時、どんな用事でお世話になるかわからない。ひとまず地元で心強い味方ができたと話していたことを思い出す。もし彼女が弁護士に何か依頼する際は、この弁護士事務所に相談をするに違いない。ボールペン一つだが、彼女はそんな律儀な人だ。また、紳士然としたご主人の方も、いつかお客さまになるかもと思ったに違いない。
なぜ、彼女は紳士からペンをもらったのか
