なぜ、あのトップセールスは翌年スランプに陥ったのか

 去年、共通の知人を介して一人のセールスと出会った。長く自動車業界に身を置く私としては、他業種の営業の話を聞けることは新鮮であり興味が尽きない。試しに目の前にあったペットボトルの水を1万円で私に売り込んでほしいと彼の営業力を試した。売り込み方は人それぞれだが、彼の話し方は言葉の一つひとつに自信が溢れており、私はいつの間にか話を聞くことに夢中になっていた。彼の話法で勧められる商品への価値観が私の中で変わっていくのが分かり、心情は「説得」から「納得」へと変化した。
 彼には明確な目標があり、今期社内の営業成績を必ずトップを取ることだった。目標を聞いた私は驚くことはなく、必ず成し遂げるだろうと率直に思った。翌年結果を知らせてくれるよう頼みその場はお開きとなった。
 期が変わり数か月後、約束通り結果を知らせる連絡がきた。久々に顔を合わせたが彼の表情は冴えない。目標のトップを勝ち取ったが、現在は成績不振で成果を出せていないらしい。初めて会った時のような自信に溢れた顔、話し方ではない。話していくうちに以前の彼との変化に気づいた。明確な目標がなくなっている。以前は定めた目標に対し、着実に歩みを進め目標を叶えたが、次の明確な目標を決めていないため歩みを止めている。意外と自分ではスランプの原因は分からないものであり他人の手助けが必要である。次なる目標設定を話し合っていると次第に彼の表情が明るくなっていき前向きな発言が出てくるようになった。