ある地方の街の繁華街、1軒のこじんまりとしたバーがある。地方都市の飲食街にありがちな形ばかり整えたような雑多な感じのバーとは趣(おもむき)とレベルが違った。
棚に並ぶお酒の種類はもちろん、店主のバーテンダーのスタイルは有名ホテルや東京銀座などにいそうなバーテンダーそのもの。聞けば業界内でも著名なバーテンダーの先代に師事したとのこと。そしてさらに見た目以上にそのバーで驚いたことがある。
まずは爽やかで軽めというオーダーでお勧めのカクテルをいただいた。グラスもそれほど大きくはなく、置かれた布製のコースターも軽いものだった。2杯目は夏らしくモヒートをいただく。今度は先ほどと違い大ぶりのグラスにクラッシュアイスが埋め尽くされ、そこに少々濃いめのお酒が入る。そしてコースターもそれに合わせて厚めで大ぶりなものとなった。しかも夏向きの涼やかな絵柄。それぞれの飲み物に合わせてコースターも変えるという。そこまで気を配っている。
さらにはチェイサー(水)をいただいたが、それにも小ぶりのコースターを用意してくれた。ちょっとしたことだがテーブルが水滴で濡れず快適。一緒にしてはいささか申し訳ないが、形ばかりのバーであれば間違いなくチェイサーにコースターはないだろう。そのひと手間の気遣いが嬉しい。単にコースターを変えるだけでなく用途やお酒の種類に合わせてチョイスするなど面倒なこと。だがそれをやるところに意義があると店主は言う。
なぜ、名高いバーでは仕事にひと手間かけるのか
