今でこそ日本でトップシェアを争うビール会社の、四半世紀ほど前の真の営業の話。
トップを走る老舗メーカーの背中は遥か遠く、一時は廃業寸前まで追い込まれるほどどん底だった会社の営業部隊。老舗メーカーの営業が既存のヒット商品の商品力に頼り切って、顧客回りもおざなりだったのを横目に、彼らは地道に酒販店や飲食店など顧客を回ってわずかな購買に結び付けていた。そしてある日、今までとは全くタイプの違うビールを発売し、爆発的ヒットを迎えることになる。
だが、倍ほどもあったシェアが徐々につまりはじめ、トップの背中も見えてきたにもかかわらず、彼らがどぶ板営業の精神とお客さまへの気配りを忘れることはなかった。
ある年の秋、社長自らがとある地方都市の自動車メーカーの社長へ挨拶に出向いた。その自動車メーカーは今でこそ小型登録車も人気だが当時は軽自動車がメイン。しかも爆発的なヒット商品を世に送り出した直後。駅に降り立った社長は、担当支店の支店長から「今日はちょっと変わったクルマに乗っていただきます」と言われ、その大ヒットした軽自動車に乗り込んだ。もちろん自動車メーカーの社長に挨拶に出向いたのは、自社のビールの売り込みのため、宴会施設等で出すビールを自社のものに切り替えてもらうためだ。
なぜ、気配りは大きな成果をもたらしたのか

